光を背負う、僕ら。―第１楽章―
何もわからないでいるあたしに、小春ちゃんは小声で坦々と言う。




「さっきの二人の会話が聞こえてきてね。……それで、あたしも言いたいと思ったことがあるの。」




――さっきの二人の会話。


それはさっきまでのあたしと明日美の会話のことだと、すぐにわかることが出来た。



でも、どうしてさっきの会話に対して小春ちゃんが何かを言おうとしているのかが、全くわからない。



小春ちゃんが考えていることがわからないせいで、無性に胸騒ぎがして眉をひそめる。



あたしの心境など知らない小春ちゃんは、また坦々と言った。




「あたしも……佐奈ちゃんのピアノはすごく上手いと思う。」




小春ちゃんの瞳は、あたしだけを捉えて離さなかった。



あたしはそんな瞳に見事に捕まってしまい、目を逸らすことが出来ない。




「…だから、」




小春ちゃんはそこまで言うと一度言葉を止めて、わずかな沈黙を作る。



これから言う言葉を強調するための沈黙を、わざわざ作ったような感じだった。





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