光を背負う、僕ら。―第1楽章―
……小春ちゃん。


あなたは一体、何が言いたいの?



その問い掛けに対する答えは、決まっているでしょう…?




「……そんなの、無理だよ。」




弱々しい声で答えると、今度は小春ちゃんが言葉を失う番だった。



声は出ていないけど、口が「えっ」とでも言うような形で固まっている。



あたしは間を置いてから、明日美に言ったことを今度は小春ちゃんに言った。




「あたしは、小春ちゃんみたいにちゃんとピアノを習ったことがないの。そんなあたしがこの場で演奏するなんて、場違いでしかないよ。」




自分で言ったことに、あたしが一番衝撃を受けていた。




“場違い”――。



無意識に言った言葉だけど、確かにあたしにはぴったりな言葉だった。



小春ちゃんのような人とあたしのような人では、雲泥の差なんだ。



ピアノを習うということをとっくの昔にやめてしまったあたしは、この場にはかなり相応しくない。



音楽界の登竜門ともいえる、この東條学園には――。





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