光を背負う、僕ら。―第1楽章―
小春ちゃんはあたしにピアノを弾かせようとして、ただおだてているだけなのかもしれない。



だけどなぜか、小春ちゃんの言葉がやけに心を打ってくる。



小春ちゃんが言っていることは、明日美や他の子達の褒め言葉と大して変わらない。



だけど不思議なことに小春ちゃんの言葉だけは、まるで救いの言葉のように聞こえたんだ。




『ピアノを、弾いてもいいんだよ』




遠回しの言葉で、そう言ってくれたみたいだった。



ただのあたしの勝手な思い込みかもしれない。



だけどあたしには本当に、小春ちゃんがそう言ってくれたような気がしてならない。





抱え込んできた悲しみや辛さ。


夢を認めてもらえない絶望感。



あたしが胸の内に隠しているこれらを、小春ちゃんが知っているがずはない。



だけど小春ちゃんはまるで、あたしに手を差し出してくれているみたいだった。



行き先も、道もわからない真っ暗な迷路で迷っている、臆病なあたしに……。






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