光を背負う、僕ら。―第1楽章―
今は、一度捉えた未来に向かって、ただ突っ走るだけ――。





「あっ、あの…!」




どこからいきなり勇気が湧いてきたのかは知らないけれど、気がつくとあたしは勢いよく手を挙げていた。



その瞬間、一斉に人々がパッとあたしの方に振り向く。



痛く感じるほど突き刺さる、たくさんの視線。




…あぁ、あたし。


今とんでもないことしているんだなーと、この時になって初めて、ひしひしと肌に感じる空気でそう思った。



だけど、自分で決めたことだから。


もう、手を挙げてしまったのだから。



……後戻りなんて、出来ない。




今もまだ震えている両手を力強く握り締めて、あたしはゆっくりと立ち上がった。



みんなの視線があたしの動きに合わせて上へ動く。



ふと正面を見ると、滝川先生と目が合った。



まともに目が合ってしまい、ドクンと一際高く鼓動が波打った。



ただでさえ緊張しているのに、さらに緊張が増す。



こんなにも緊張するのは、もしかしたら初めてのことかもしれない。





< 397 / 546 >

この作品をシェア

pagetop