光を背負う、僕ら。―第1楽章―
滝川先生はあたしと目を合わせたまま、あたしが自ら口を開くのを待っている。



だからどんなに緊張していたとしても、あたしが何かを言わない限り何も始まらない。




……だから、言わなくちゃ!




最後に、もう一度強く自分に言い聞かせた。



そうすると、気のせいかもしれないけれど、張っていた緊張の糸が少しだけ緩んだような気がした。




「…あたし、演奏したいです!」




いくら緊張が少し和らいだといっても、ちっとも緊張しなくなったわけではない。



そのせいで絞り出した言葉は、まるで早口言葉のようになっていた。



だけどそんな声でも、滝川先生にははっきりと伝わっていたらしい。



滝川先生は何かに疑問を持つわけでもなく、ただ平然として丁寧に言葉を返してきた。




「もちろんいいわよ。演奏をしてくれるのは大歓迎だもの。」




滝川先生は頬を緩めて笑顔になる。



その笑顔を見たおかげかして、あたしも張っていた顔を少しだけ緩ませることが出来た。





< 398 / 546 >

この作品をシェア

pagetop