光を背負う、僕ら。―第１楽章―
「さっき演奏をした戸沢さんと楽器がかぶっているのは、わかっています。…だけどあたしは、ピアノが使いたいです。ピアノが、あたしの一番好きな楽器なんです。」




その言葉に、あたしの思いをすべて詰め込む。



ピアノが好きだという、ありったけの思いを。




あたしがそう言ったきり、滝川先生は何も言わずに、ただあたしの瞳をじっと見つめている。



あたしもそんな先生をじっと見つめ返して、しばらく視線を合わせていた。



あたしと滝川先生の間には、何とも言えない微妙な空気が流れていた。



その空気が意味するのは、一体何なのだろう。



滝川先生の言葉を聞くまでのこの空気が、あたしにとっては苦痛でしかない。




――どうか事は、あたしが望む方に進みますように…。




お互い無表情で見つめ合った末、先に表情を作ったのは滝川先生だった。




「…わかりました。あなたにも、ピアノで演奏してもらいましょう。」




口角を上げて笑みを作った滝川先生は、ピアノの方に手を差し出した。



事はあたしが望んだその場所へと、進んだのだった。





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