光を背負う、僕ら。―第1楽章―

思い出の曲

「あなたはどの曲がいいかしら?」




滝川先生は小春ちゃんの時と同様に、近くにあった机に何枚かの楽譜を広げた。




「えーっと、そうですね…。」




だけどあたしは、小春ちゃんのようにパッと楽譜を選ぶことが出来なかった。




だってそれもそのはず。


ちゃんとした楽譜がある曲を弾いたのは、小学一年生の時が最後。



それ以来ピアノに関わってこなかったあたしは、ピアノの曲というものに対してかなり無知だ。



過去に弾いた曲を覚えていないわけではないけど、ここにその曲があるのかな……。




自分が無知であることにかなり不安を覚えながら、一枚ずつ楽譜に目を通した。



さすが滝川先生が「一緒に演奏」と言うだけのことはあった。



ピアノの楽譜と言っても、用意された楽譜はピアノ協奏曲の楽譜ばかり。



曲名ぐらいは知っているものはあっても、ちゃんと知っている曲というものは、なかなか見つからなかった。




……どうしよう。


すごく、大変なことになっちゃったかも。




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