光を背負う、僕ら。―第１楽章―

「佐奈がまだお母さんのお腹の中のいた時、よくこの“月の光”を弾いていたの。そして佐奈が産まれてからは、子守歌の代わりによく弾いていたわ。」



「ふ～ん。」




お母さんは懐かしそうにその時のことを話していた。



だけどどうしてそれが、あたしが感じた“懐かしい”という感情と関係があるのか、あまりよくわかっていなかった。



そんなあたしの心情に気付いたのかして、お母さんが続ける。




「きっと佐奈は、お腹の中にいた時からずーっと聞いていたこの曲を覚えているのよ。だから佐奈は、“懐かしい”って感じたんじゃないかな。」



「へぇ～、そっか！」




ずっとわからなかったことが、やっとわかった瞬間だった。



どうして、つきのひかりという曲を聞くと“懐かしい”と思ったのか。



それはお母さんがあたしに注いでくれた愛情と同じだったんだ。




“月の光”はあたしとお母さんを繋ぐ架橋――愛の曲だ。