光を背負う、僕ら。―第1楽章―
様々な声が耳に入ってくる中で、あたしはやっと自分の意識を取り戻してきていた。




いつまでもぼんやりしていたらダメだよ……あたし。



今は……。

今はとにかく、集中しないと。




蘇った記憶のせいで未だに戸惑う気持ちもあった。



だけど今は、そのことにばかり気を取られてはいけない。



そう自分に言い聞かせながら、目の前に準備された楽譜に目を向けた。



準備されている楽譜はもちろん“月の光”の楽譜。



その楽譜を見ながら、ピアノの曲をどうやって在校生の人達と演奏するのだろうと思ったりした。



だけどその疑問は、再び蘇った記憶ですぐに解決した。




そういえば以前、お母さんに聞いたことがある。



オーケストラ版の“月の光”があるっていうことを。



だから在校生の人達と演奏出来るのだと納得しながら、深く息を吸って深呼吸をした。




バクバクと鳴る鼓動。



さっきまでは他のことに気を取られていて気付かなかったけど、ふと気が付くととても緊張していた。





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