光を背負う、僕ら。―第1楽章―
♪~♪~♪♪♪♪~♪




しなやかに、流れるように動く指。



それが生み出すメロディーは、部屋の中によく響いていた。



ピアノが奏でる繊細な音と、管楽器や弦楽器のダイナミックな音が混ざり合って一つになる。



そうやって出来た“月の光”に、その場にいる人みんなが心を奪われていた。



演奏しているあたし自身も、知らぬ間に聞き惚れていた。




……すごい。


ピアノだけで弾く時とは全然違う。



“月の光”って、こんな風にも演奏出来るんだ…。




そんなことを頭の隅っこで思いながら、あたしは一つ一つの音を丁寧に弾いていった。




盤に触れる度に高揚していく、ピアノを弾ける喜びが。


自分が作り出す、高音のメロディーが。



あたしを痺れさせていく。





こんな風にちゃんとした曲を弾くのは、いつ以来のことだろう?



最近弾いた曲は全部自分が作った曲ばかりで、ちゃんとした曲は全く弾いていないはずなのに。



今、不思議なことに、スラスラと楽譜のある曲を弾いていた。





< 415 / 546 >

この作品をシェア

pagetop