光を背負う、僕ら。―第1楽章―
だけどあたしは堅苦しくて素っ気無い雰囲気の人よりも、こういう親しみやすくて優しい雰囲気の人の方がいい。



きっとこの人が作り出す音楽は、日だまりみたいに温かいだろうな…。




そんなことを思いながら滝川先生と学園長を見ていると、ふと学園長だけがあたしの方を見た。




えっ、何?


もしかしてさっきの、声に出てたのかな…。




ちょっとした不安を抱いていると、学園長がこちらに向かって歩いてきた。



そのせいで抱いた不安は余計に大きくなる。



だけどあたしの元に寄ってきた学園長の口から出た言葉は、あたしが想像していたものとは違っていた。




「…君だね?さっき“月の光”を弾いていたのは。」



「あっ…はい。そうです。」



「そうか。」




学園長はそう言って、どこか嬉しそうに微笑んだ。




……あれ。


あたし、この人とどこかで会ったことがあるような…。



だけどあたし、どこでこの人と会ったのだろう?



学園長に会ったのは、今日が初めてなのに。



……会った?

違う。


会ったんじゃなくて、見たんだ。



だけど、どこで見たんだろう…。





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