光を背負う、僕ら。―第１楽章―

あたしが余計な不安を抱えていたことなど全く知らない学園長。



はっはっはっ、と豪快に笑いながら、あたしの肩を何度も叩く。




学園長……ちょっと痛いです。




同じように肩を叩かれている小春ちゃんを見ると、小春ちゃんの表情にはあたしと同じで戸惑いが滲み出ていた。



学園長の雰囲気の変わりっぷりに驚いているのは、どうやらあたしだけではないらしい。




「君は確か…戸沢香澄さんの娘で、名前は小春さんと言ったかな？」




さっきまでは少しおどけているような素振りを見せていた学園長。



だけど突然表情をきりっとさせたかと思うと、紳士的な口調で小春ちゃんに話し始めた。




「君が香澄さんの娘だと聞いて少し驚いたよ。香澄さんのことは在学時代から知っていたけど、まさか娘さんまでこんなにいいピアノを弾けるようになっていたなんてね。」



「ありがとうございます。」




小春ちゃんは学園長直々の褒め言葉に、丁寧にお礼を言っていた。



きちんとした態度で冷静さを保っていたけれど、言葉に出来ない嬉しさを微笑みから感じることが出来た。