光を背負う、僕ら。―第1楽章―
ねぇ…。


もしかして、学園長が言っている昔の教え子っていうのは……。




「君も知っているかもしれないね。今は引退しているけれど、彼女は結構有名なピアニストになっていたから。その昔の教え子というのは……」




学園長が次に口を開くまでの時間は、一体どのくらいあったのだろうか?



あたしにはその時間が、どんな瞬間よりも長く、とてつもなく緊張するものだった。



学園長の真直ぐな瞳が、あたしの曖昧に揺れる瞳とぶつかる。





「……笹川詩織というんだ。」




ドクンッ!!




自分でも驚くほどに、また鼓動が強くなった。




あぁ……やっぱりそうだった。



この人は、お母さんを知っている人。



昔のお母さんの秘密も、すべてを知っている人…。





ザワッ…ザワッ…




学園長がお母さんの名前を口にした途端、やっと静寂を取り戻したと思っていた部屋が一気にそれを失った。





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