光を背負う、僕ら。―第１楽章―
『私ね、佐奈ちゃんの演奏聞いてたらあるピアニストを思い出したわ。』



ねぇ…もしも。

もしもの話だけど。



『先生が幼い頃有名だったのよ。今は引退してるけど、結構有名だったからあなた達の年代でも知ってるかもしれないわね。』



誰もがあたしのピアノを、お母さんと同じだと言ってくれるのならば。



『笹川詩織さんって人なんだけど、……佐奈ちゃん知ってるかしら？』



自分の才能に、少しだけ。


……自惚れてもいいですか？




あの時の鈴木先生の言葉が頭の中で再生されている間、あたしは不思議な気持ちでいっぱいになっていた。



学園長がお母さんを知っている。



…ということは、あたしが笹川詩織の娘であることがバレる可能性があるわけで。



本当なら、鈴木先生にバレそうになった時のようにどぎまぎしているはずだった。



だけど今のあたしは、違う意味でドキドキしていた。




鈴木先生と、学園長。



二人の先生にお母さんと似ていると言われたあたしのピアノ。



自分がどれくらいお母さんと似ているかなんて、全くわからない。



だけど音楽の先生達が似ていると感じたのなら、本当に似ているのかもしれない。





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