光を背負う、僕ら。―第1楽章―



「ありがとう。 では、一つ聞かせてくれ」



あたしの返事を聞いて、学園長はほんの少しだけ笑顔を取り戻した。



だけどそれは、
ほんの一瞬で、
本当に僅かなこと。



すぐに表情は戻ってしまい、聞いているこっちまで悩んでしまいそうになる大きなため息を一つ零した。



そして再び、口を開く。



「……君の母親は――笹川詩織ではないのか?」


「……っ!?」



それは、本当に突然の出来事だった。



学園長の口から出てきた言葉は、全く予期もしていなかった言葉で。



学園長が言っていた“変わった質問”の意味を、やっと理解出来たような気がする。



最高に変わった質問。


そして。


――最悪の質問だ。




「……っ」



どうして、どうして。



どうして学園長は、こんな質問を?


もしかして、あたしとお母さんの関係に気付いたの?


ピアノの演奏を披露しただけで?



だけどさっき“笹川詩織”の話をしていた時は、知っているようなことは言っていなかった。


だったらばれてしまったのはいつ、どのタイミングで?




――全く、分からない。



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