光を背負う、僕ら。―第1楽章―
パニックを起こした頭では、何を考えても無意味だった。
だけど今ここで少しでもうろたえてしまえば、全てが台無しになる。
あたしが周りから囃立(はやした)てられてしまわないようにと、お母さんが言いつけた約束。
ピアノを弾くことを諦めた日々。
秘密を隠すために積み重ねた、嘘の数々。
全てが……崩れさってしまう。
それは、何としてでも阻止しなければならない。
だからあたしは、また大きな嘘で秘密を塗り固めることにした。
本当は、胸が苦しくて張り裂けそうだった。
秘密がばれてしまったからじゃない。
また、嘘を重ねることが苦しかった。
だけどやっぱり、今更後戻りをすることは出来ない。
こんなにたくさんの人がいる前では、もう。
――嘘を突き通すしかなかった。
あたしはポーカーフェースを保つことだけに意識を集中させる。
だけど周りから聞こえてくる声が頭の中に響いて、なかなか集中することが出来ない。