光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「さっ…笹川詩織が母親って?」
「えっ、あの子が?」
ただでさえさっき、ピアノを弾いたことで注目されていたばかり。
それに加えて、今は誰もが驚く事実を学園長に言われてしまった。
学園長の言葉に驚いたのがあたしだけではないのが確かで。
今はただ、更に注目を浴びているのが現実だった。
普段は滅多に注目を浴びないから、慣れない状況に鼓動が早くなる。
「佐奈…」
しかも明日美や流歌など。
同じ中学校の子達に驚いた表情で見つめられる度、余計に鼓動が早くなって緊張が高まる。
きっと、この場にいて一番驚いているのは明日美と流歌だと思う。
…だってあたし、ずっと二人を騙してきたんだもん。
“笹川詩織”は知らないと言い切って。
ピアノは習ったことがないと嘘をついた。
あれほど、ばれてしまってはいけないと思っていたのに…。