光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「…違います。 あたしは笹川詩織さんの娘ではありません」
落ち着いた様子に少し驚きも混ぜた表情を保ち、はっきりと強く否定の言葉を返した。
あたしの返事を聞いて、また周りの人達がざわめくのが分かる。
みんなはきちんと否定したあたしの言葉を、信じ始めていた。
…だけど、学園長は違った。
「…本当に、そうなのか?」
学園長の瞳に、揺るぎはなかった。
ただじっとあたしの瞳を見つめている。
まるで、あたしの心に訴えかけてくるように。
学園長があまりにも必死な様子で聞いてくるものだから、罪悪感のあまりに本当のことを言ってしまいそうになる。
だけど自分の心を鬼にして、喉元まで出てきた秘密を飲み込む。
代わりに嘘を、無理矢理口から吐き出した。
「本当です」
たったそれだけのことを言うのに、凄く体力を消耗したような気がする。
それぐらい、精神を集中していた。