光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「これは君のお母さんのピアノリサイタルの時に、私が撮った写真だよ」
「お母さんの…リサイタル…」
思わずそう呟いてしまった後、ハッとして顔を上げる。
そして、優しく微笑む学園長と目が合った。
「あっ…」
しまった、と思った時には、もう手遅れだった。
学園長が確信を込めた声で言う。
「…やはり、君は詩織さんの娘だったんだね」
学園長は最初から全てを分かっていた、とでも言うように、とても穏やかな表情をしていた。
何も言えずにいたあたしは、そんな学園長を見るだけでほんの少しだけど気持ちを落ち着かせることが出来た。
あたしが何も言えないでいたのは、秘密がばれてしまったからじゃない。
自分で呆気なく、秘密をばらしてしまったからだ。
さっき、学園長が見せてくれた写真の説明をしたとき。
あたしは思わず、
『“お母さん”の…リサイタル…』
と言ってしまった。
自ら笹川詩織のことを、“お母さん”と呼んでしまっていたのだ。