光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「君のことは、詩織さんからよく聞いていたんだ。
自分に似て、何よりもピアノが好きな娘だってね」
学園長はあたしの面影を探すように、あたしの姿を改めて見ている。
「詩織さんのリサイタルに来ている君をよく見掛けたよ。
私もよく、詩織さんのリサイタルに行っていたからね」
「………」
「リサイタルに来ている幼い君を見たら、詩織さんの言葉の意味が分かったんだ。
詩織さんの演奏を、目を輝かせながら見ていた君の姿を見たらね」
「そんなことが、あったんですね…」
「君は私に会ったこと、覚えていないかい? 結構会ったことはあるのだが…」
ほんの少し期待しているような学園長の言葉に、あたしは虚しく首を横に振るだけ。
「…すみませんが、学園長のことは覚えていません」
「…そうか」
学園長ががっかりしているのは、声から充分理解することが出来た。