光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「君と話せる機会はもう無いかもしれないからね。
この機会に、じっくり話をしたいんだ。
だから後で、学園長室に来てくれるかな?」
学園長はもう一度同じことを、念を押すように言った。
「えっ、いや。 その…」
一番疑問に思っていた、学園長があたしと話したい理由。
それはさっきの言葉から理解することが出来た。
だけどこの場をどうやって乗り越えたらいいかは、全く考えることが出来なかった。
だから正面(まとも)な言葉が口から出ることはない。
…どうしよう。
いきなりそんなことを言われても、本当に困る。
東條学園の学園長とじっくり話をする機会は、普通な滅多にない……というか絶対にない。
だからこれは、学園長から直々に音楽についていろいろな話を聞くことが出来るビッグチャンスだ。
だけど笹川詩織の娘だとばれてしまっているのなら、話は別だった。
秘密がばれちゃった今、どんな話をするっていうの……?
頭の中がグチャグチャで、どうにかなってしまいそうだった。