光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「…では、佐奈さん。 体験入学が終わった後でまた会おう」
えっ、ちょっと…!!
…と言う間さえもあたしには与えずに、学園長は軽く会釈をすると、さっさと部屋から去っていってしまった。
まるで、あたしの答えから逃げるように。
完璧に自分のペースで簡単に事を運んでいった学園長に為す術(すべ)なく、あたしはただただ言葉を失うばかり。
そして学園長がかつていたその何もない空間を、見つめることしか出来なかった。
…どうしよう。
学園長に、勝手に全て決められちゃった。
まだ、何も返事していなかったのに…。
自ら問い掛けてきたというのに、あたしの答えを聞く前に事を決めた学園長。
今思うとあたしは、学園長の手中で見事に踊らされていただけなのかもしれない。
「…で、では、そろそろ再開しましょうか」
学園長が去った後の室内は、何事もなかったようにシーンと静まり返っていた。
そんな中で懸命に口を開いた滝川先生の口調はたどたどしかったけど、この場をどうにかしようとする必死さはとても伝わってきた。