光を背負う、僕ら。―第1楽章―



するとそれが合図のように、一気に室内で様々な声が飛び交い始める。



「さっきの学園長の話って、本当なんだよね…?」


「絶対そうでしょう? だって学園長、写真持ってたし」


「そうだよね。 それにあの子、笹川詩織さんのことをお母さんって言ってたもんね」



あちらこちらから聞こえてくる声は、当然だけど全てあたしに関する話ばかり。



中学生も、在校生も、引率の先生も。


ここに集まっている人達はみんな、小声で話しているつもりだろうけど全てがあたしの耳に届いている。



……分かりきっていたことだけど。


いざこうやってみんなにから注目されると、耳を塞ぎたくて仕方がない。



だけどそれは出来なくて。


俯いて唇を噛み締めながら、この空気に絶えることしか出来なかった。



「で、では、戸沢さんと麻木さん。 自分の席に戻って下さい」



ずっと部屋の中心で立ったままだった小春ちゃんとあたしは、滝川先生の言葉でやっと席へ戻ることになった。



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