光を背負う、僕ら。―第1楽章―
秘めた才能、切ない旋律
自分の身の回りの片付けをしていた最中。
先に片付けが終わったらしい明日美と流歌があたしの傍にきた。
「ねぇねぇ、佐奈!」
「ん、どうしたの?」
やけに陽気に話しかけてくる明日美に、あたしはせっせと手を動かしながら答える。
「今日さ、“あれ”弾いてよ!」
明日美のこの言葉で、動かしていた手がぴたりと止まった。
「えっ…? “あれ”ってまさか……」
「そうそう! “あれ”だよ!」
明日美の後ろにいた流歌がひょこっと身を乗り出して言った。
「え~……、嫌だよ」
と、再び片付けをする手を動かしながら顔をしかめる。
「「どうして?」」
あたしの返事に納得出来ない二人が声を重ねて聞き返してきた。
しかも少し、不満そうな表情で。
「だって、おとといの日も“あれ”を弾いたでしょう?」
「おととい弾いてくれた以来聞いてないから聞きたいの」
「そうだよ。 さっき流歌と話してたんだよ? 佐奈の“あれ”が聞きたいねーって」
「そんなこと言われても…」
勢いのいい二人の言葉に押されて、思わず「うん、いいよ」と言いそうになったのを、なんとか堪えた。