光を背負う、僕ら。―第1楽章―
だけどそんなことをしたところで、この状況は何一つ変わらない。
あたしが席に戻るまでも、みんなの話し声は治まらない。
あたしは肌に突き刺さるような空気の中で、ゆっくりと足を進めて席へと歩み寄る。
部屋の真ん中にいる時もかなり息苦しい状況だった。
だけど同じ中学校のみんなが近くにいる自分の席へ戻ってきた時の方が、ずっと息苦しくて嫌だった。
何百倍、何千倍、何万倍も。
みんながあたしを見ながら何を思うのかと考える程に、自分が自分じゃなくなるみたいにもがき苦しんだ。
「…では、体験入学を再開しますね」
あたしと小春ちゃんが席に着くと、滝川先生は静かに口を開いた。
だけどその声は全くと言っていい程、頭の中には入って来なかった。
未だに続くみんなのひそひそ話も、滝川先生の言葉も、全てが右耳から左耳へと抜けていく。
…みんなに、ちゃんと話そう。
心ではそう思ってる。
だけどみんなからどんな反応が返ってくるんだろうと考えると、体が自然と震えてくるのだった。