光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「次は部屋を移動して――…」
滝川先生の説明が続く間、両手を膝の上でぎゅっと握り締めながら、電灯の光が反射する床を見つめていた。
顔は上げない――上げられない。
みんなの顔を正面(まとも)に見てしまうと、きっと感情が溢れ出してしまう。
だから今はみんなには悪いけど、気配を消すような気分で黙っていた。
だけどみんなの顔を見ない分、みんなの気持ちが全く分からないのも事実だ。
あたしだって。
みんなだって。
お互いの心情が分からないままで、複雑だった。
そのせいかして、あたし達の周りだけは暗い雰囲気が漂っている。
そんなあたし達を見て、他の人達はまたこそこそと口を開くだけだった。
……逃げ場を失った、とでも言うのだろうか。
全ての秘密がばれてしまい、もう後に先にも行き場を無くしてしまったのだ。