光を背負う、僕ら。―第1楽章―
“あれ”……か。
弾きたい気持ちはあたしにもあるけど、弾いたらお母さんとの約束をまた破ることになるし…。
すでに前回に弾いた時に、約束破ってるしなー……。
お母さんは怒ると怖いというか、うるさいし。
ぐるぐると考えが渦巻く頭の中では、お母さんと、明日美と流歌の姿もぐるぐると回っていた。
…とその時、同じ三年生の部員達があたし達の周りに集まってきた。
詳しく言うと、あたし達じゃなくて、主にあたしを中心に集まっている。
「なになにー、どうしたの?」
部員の中でも一番好奇心旺盛な彩愛(あやめ)ちゃんが、さっそく話しかけてきた。
「佐奈にね、“あれ”を弾いてって頼んでたところだよ」
こちらもまた、陽気な感じで明日美が丁寧に答えた。
「“あれ”って何なの?」
すかさず質問する彩愛ちゃんに、明日美は思い出したように言う。
「おとといの放課後に佐奈が弾いた“あれ”だよ! ほら、彩愛ちゃん達もいたでしょう?」
「えーっと……」
彩愛ちゃんは腕組みをしながら、おとといの記憶を探り出す。
それを聞いた周りに集まっていた子達も、同じような素振りをして過去の記憶を探っていた。