光を背負う、僕ら。―第1楽章―
…だから。
そんなみんなにお礼をするように、あたしはゆっくりと全てを話し始めた。
小さい頃、ピアニストであるお母さんにピアノを習っていたこと。
だけどお母さんの事故があってからは、全然ピアノを弾いていないこと。
あたしが笹川詩織の娘であることは、秘密にすると言われていたこと。
ピアノは弾かないと、約束していたこと。
みんなには言わないようにしていた全てのことを、包み隠さず明かした。
言い忘れることがないようにゆっくりと慎重に話す度、みんなは何度も頷いてくれていた。
そんなみんなの必死な態度が嬉しくて、胸の底から温かい感情が沸き上がってくるのを感じた。
「…ずっと隠し続けるの、大変だったよね」
あたしが話し終えると、誰かが呟くようにそう言った。
「……確かに、大変だったかもしれない」
いつみんなにばれてしまうか分からなくて、ひやひやしたこともあった。
だけど、それより…。
「あたしは、ピアノが弾けないことの方が……ずっと辛くて大変だった」
そっと、目を閉じる。
真っ暗な闇の中に浮かんでくるのは、今までのことだった。