光を背負う、僕ら。―第1楽章―
突然、ピアノを弾くことを禁じられた日。
あんなにも悲しくて、心が張り裂けそうになったことはない。
あの時には、もう。
ピアノがあたしの全てだったんだ。
ピアノを弾くことで、気持ちを表して。
上手く弾けるようになる度、自信をつけるようになった。
ピアノを弾くということが、あたしの生き甲斐になっていたと言っても過言じゃない。
――何よりも、ピアノを愛していた。
「佐奈は、凄くピアノが好きなんだね」
過去のことを思い出しているあたしの横顔には、心の声が表れていたのかもしれない。
明日美の言葉を聞いたら、そんなことを思った。
「…でも、佐奈。 こんなにも詳しく、あたし達にこの話をしちゃって良かったの?」
「えっ、どうして?」
明日美の質問に質問で返すと、ちょっと戸惑ったように明日美が言った。
「だって…。 さっき佐奈が言ってたじゃん。 お母さんにはこのこと秘密にするように言われるって」
「…あぁ、そのことね」
一瞬、お母さんの顔が頭に浮かんで苦笑いをする。