光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「…もしかして、“あれ”のこと?」
しばらく考えこんだ彩愛ちゃんが、何かを思い出したように言った。
他の子達も、同じような表情をしている。
あー…。
彩愛ちゃん達まで思い出しちゃったよ…。
それだけで、あたしの悩みは増加してしまった。
「彩愛ちゃん達が想像してるもので、きっと当たってるよ」
流歌がそう言うと、彩愛ちゃん達の表情が一気に明るくなった。
そして、あたしに飛び付くように言う。
「“あれ”をもう一度弾いてくれるの!?」
「いや、だから、まだ弾くとは言ってない…」
思わず、彩愛ちゃんの迫力に怖じ気づきそうになった。
そしてふと自分の周りを見ると、明日美や流歌、彩愛ちゃん達を始めとする三年生の部員達があたしを取り囲んでいた。
…何なの?
この状況。
そう思うのは束の間。
次第にあたしを取り囲む子達が、子供が駄々を捏ねるように口々に喋り始めた。
「せっかくだから、もう一度弾いて!!」
「佐奈ちゃんの“あれ”聞きたい!!」
「この前、すっごく良かったよ!!」
「お願い~!!」
だんだん、駄々が酷くなってくる。
どうしてあたし、こんな目に遭ってるんだろう……。