光を背負う、僕ら。―第1楽章―



「…あのね、佐奈ちゃん」



先に口を開いたのは、鈴木先生だった。



ここは鈴木先生の行動に甘えて、あたしはじっと先生の顔を見ながら言葉を待った。



先生はあたしの方は見ずに、前を見据えたまま続けた。




「佐奈ちゃんには黙ってたけど、私薄々気が付いてたの」




何を、と聞こうとした。



だけど先生が余りにも真直ぐ前だけを見つめているものだから、口を開くことを躊躇(ためら)われた。



先生の瞳が……真剣だったから。




「…佐奈ちゃんが、笹川詩織さんの娘だってこと。 何となくだけど、そんな気がしてたわ」


「せん…せい…」




鈴木先生の言葉は衝撃的なものであることには違いない。



だけどあたしは不思議なことに、思ったよりも冷静さを保っていた。




――きっと。


あたしだって気付いていたんだ。



先生はもしかしたら、あたしの嘘を見破っているかもしれない。



知ってて、何も聞かずにそっとしておいてくれているのかもしれない。



きっと、そうなんだって。



それにさっきの先生の瞳が、全ての答えを教えてくれているような気がする。



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