光を背負う、僕ら。―第1楽章―



「…先生は、どうしてあたしが笹川詩織の娘のような気がしたんですか?」


「そうね…。 さっきも言ったけど、やっぱり何となく、が一番かな」


「何となく……ですか?」


「うん、そう。 ピアノの演奏を聞いた時は、特にそんな感じがしたの。 私、あの時も言ってたでしょう?」


「あっ…」



ふと頭に浮かんできたのは、先生が言った“あの時”の光景。



先生に、初めてあたしのピアノの演奏を聞かれてしまった時のこと。




『私ね、佐奈ちゃんの演奏を聞いた時、すごく笹川さんの演奏に似てるって思ったの』




…やっぱり。


思い出して最初に思ったのはそれだった。



あの時の鈴木先生は、まるで全てを知っているかのようにああ言っていた。



やっぱりあれは、薄々気付いていたから言った言葉だったんだ。



「でも先生、どうして気付いていたこと言わなかったんですか?」



あたしがそう聞くと、先生は目を真ん丸にして驚いた。



かと思えば、急に可笑しそうに笑った。



< 474 / 546 >

この作品をシェア

pagetop