光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「……はぁ…」
悩みがすべて詰まったような、深く暗いため息をついた。
けどそのため息は、あっという間にみんなが駄々を捏ねる声の中へと消え去ってしまった。
さすがにこの状況に嫌気が差してきたあたしは、渋々と口を開く。
「…一回だけだよ?」
「「うん!!」」
みんなは見事なまでに声を揃えて、嬉しそうに返事をした。
だけどあたしは、この返事に期待はしていない。
この前弾いた時にみんなが、
『アンコール』
って言ってせがんできたこと、忘れてないからね…。
あたしを取り囲んでいたみんなは、嬉しそうな表情をしながら残りの片付けをしていた。
あたしも渋々と片付けを再開する。
また、お母さんとの約束破っちゃうなー…。
頭の中では、顔をしかめるお母さんの顔が浮かんでいた。
…ごめんね、お母さん。
心の中でそう呟いてから、頭の中で怒り続けるお母さんの映像を無理矢理かき消した。
「さようならー」
「バイバーイ」
片付けが終わった後に挨拶をして音楽室を出ていく後輩達に、あたし達三年生は手を振りながら挨拶を返していた。
しかもみんなの声は、いつもよりトーンが高い。
あたしが“あれ”を弾くことが、余程嬉しいのだろう。