光を背負う、僕ら。―第1楽章―
それに比べてあたしの挨拶とくれば……。
「…バ…バイバーイ」
このように、今までしてきた挨拶の中で一番暗いものだった。
声のトーンもいつもよりかなり低い。
迫りくる“あれ”を弾く瞬間を、少しでも遅らせたい気持ちで一杯だった。
だけどあたしの気持ちとは裏腹な声をした明日美が、後輩達が音楽室を出ると口を開いた。
「佐奈、よろしくね!!」
キラキラと瞳を輝かせながら言う明日美。
他のみんなも、まったく同じだった。
…まぁ、仕方ないか。
あたしは諦めもあり、気持ちを前向きにしながらある楽器に近付く。
その楽器を弾くために用意されているイスに座り、鍵盤の蓋を開けた。
すると喋っていたみんなが、一斉に口を閉じた。
シーン……と静まり返る音楽室。
窓から、そよそよと風が入ってくる。
静まり返ると、運動場で部活をする人達の声と、鳥の鳴き声がはっきりと聞こえてくる。
あたしは心を落ち着かせようと、静かに瞼を伏せる。
心を落ち着かせながら、身体中の神経を指先に集中させた。