光を背負う、僕ら。―第1楽章―
気が別の方向へと向いているあたしに気づかないまま、先生は話を続けていく。
「こうやって私も偉そうなこと言ってるけど、中学生の時はそんな大人の気持ちは全く分からなかったわ。
だからね、結局は自分で最後の決断をした。
――ピアニストにはならないっていう決断をね」
「そんな……どうしてですか? ピアノの先生は応援してくれていたのに」
羨ましくて、いいなと思った。
お母さんにピアニストを目指すことを反対されて、誰にも応援してもらえない今のあたしには、応援してくれる人がいるだけで幸せだと思っていた。
誰か一人でも、自分のことを、自分の夢を応援してくれる。
それだけで、十分後押ししてくれているのだから。
だけど、先生の考えは違っていた。
「えぇ、そうよ。 ピアノの先生だけは、いつでも応援してくれていた。
…でもね、応援してくれる人がいるかどうかということは問題ではなかったの」
「…それは、どういう意味ですか?」
「問題は、ピアノに対する想いだったの」
「ピアノへの……想いですか」
未だによく意味が分からないあたしに、先生はまたゆっくりと話してくれた。
どこか悲しそうな、そんな声で。