光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「私はきっと、ピアノに対する想いが弱かった。
…佐奈ちゃんのように、心からピアノを愛していなかったの」
「そん…な。
先生だって、十分ピアノが好きですよ。 話を聞いていたら、それは十分伝わってきます」
あたしの言葉を聞いて、先生は悲しそうに瞳を揺らしたあと、優しく微笑んだ。
「ありがとう。 そう言ってもらえて嬉しいわ。
…でもね、やっぱりあたしは弱かったの。
ピアノが好きだって思う気持ちも、笹川さんに憧れる気持ちも」
「………」
もう、何も言えなかった。
だってどんな言葉を言ったとしても、今の状況が変わることはない。
それに先生は、とっくの昔にピアニストへの思いを断ち切っているみたいだから…。
「………」
「ごめんね、佐奈ちゃんに悲しい思いをさせちゃって」
こんなときでもあたしの様子を窺って、なお心配をしてくれる鈴木先生。
その優しさが逆に辛くなって、先生の言葉を否定するために横に振る首に力が入る。