光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「あたしが悲しむのは、別にいいんです。
だって、先生の方が悲しいはずだから…」
「佐奈ちゃん…」
チラリと先生の顔を見上げると、涙を堪えるように顔をしかめていた。
余計悲しむようなこと、言っちゃったかな…。
自分の発言を今更ながらに悔やんでいると、突然頭に温かみのあるものが触れた。
「えっ…」
何かと思って再び顔を上げると、何を思ったのか鈴木先生があたしの頭を撫でていた。
まるで、慰めるように。
……あぁ、そうか。
先生はやっぱり、どこまでも優しいんだ。
自分の発言で勝手に落ち込んでいるあたしを、こうやって慰めるほどに。
――人はどんなときに涙を流すのだろう。
悲しいとき?
悔しいとき?
辛いとき?
苦しいとき?
……ううん。
きっと、それだけじゃない。
嬉しいとき。
誉められたとき。
愛されたとき。
そして、優しくされたとき。
心が空っぽになるときだけじゃなくて、心が満たされるとき。
そんなときも、人はきっと涙を流すのだろう。
あたしは今、そのことを強く感じていた。
そして先生には気付かれないように、一粒だけ涙を落とした。