光を背負う、僕ら。―第1楽章―



「あたしが悲しむのは、別にいいんです。
だって、先生の方が悲しいはずだから…」



「佐奈ちゃん…」




チラリと先生の顔を見上げると、涙を堪えるように顔をしかめていた。



余計悲しむようなこと、言っちゃったかな…。



自分の発言を今更ながらに悔やんでいると、突然頭に温かみのあるものが触れた。




「えっ…」




何かと思って再び顔を上げると、何を思ったのか鈴木先生があたしの頭を撫でていた。



まるで、慰めるように。




……あぁ、そうか。


先生はやっぱり、どこまでも優しいんだ。



自分の発言で勝手に落ち込んでいるあたしを、こうやって慰めるほどに。




――人はどんなときに涙を流すのだろう。



悲しいとき?

悔しいとき?

辛いとき?

苦しいとき?



……ううん。


きっと、それだけじゃない。



嬉しいとき。

誉められたとき。

愛されたとき。

そして、優しくされたとき。



心が空っぽになるときだけじゃなくて、心が満たされるとき。



そんなときも、人はきっと涙を流すのだろう。



あたしは今、そのことを強く感じていた。



そして先生には気付かれないように、一粒だけ涙を落とした。



< 495 / 546 >

この作品をシェア

pagetop