光を背負う、僕ら。―第1楽章―
先生は必死に伝えようと、言葉を選びながら続けた。
「私がピアノに対する思いは、ただピアノが弾ける人が羨ましいと思う気持ちだった。
自分には届かないレベルでピアノを弾く笹川さんは、とても輝いて見えていた。
私はただ、そのことが羨ましくて憧れていただけなの」
「………」
「でも、佐奈ちゃんは違うはずよ。
ピアニストであるお母さんが羨ましくて、ただ憧れていたわけじゃない。
実際にお母さんのようなピアニストを尊敬して、そんなピアニストを目指してる」
「………」
「……いいえ、きっと違うはず。
佐奈ちゃんはもう、“笹川詩織”というピアニストを目指しているのではないわ。
本当は、もっと上を目指してるんじゃないかしら?」
「…それ…は」
もう、“憧れ”と“尊敬”の違いを理解することが問題ではなかった。
先生の言葉はあくまで予想したもののはずなのに、どこかあたしの気持ちに合っているように思える。
だからこそ、言葉に詰まってしまう。