光を背負う、僕ら。―第1楽章―
神経を集中させると、もうあたしの耳にはさっきまで聞こえていた声達は入らない。
そして瞼を開けると………
そこにあるのは一台のピアノ。
そしてそれを真直ぐ見るあたしの瞳は、どこかしらがピアニストに似た瞳をしていた。
そっと、ピアノの鍵盤に指を添えた。
誰かが、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。
音が入らなかった耳にその音が入ってきた時、あたしは静かに指を鍵盤の上で動かし始めた。
♪~♪~♪♪~♪~♪
しなやかに鍵盤の上で動きだす指。
その指は、ゆったりと落ち着いたメロディーを奏でた。
あたしはピアノに心を奪われているように、無我夢中でピアノを弾き続けた。
ピアノの周りであたしの演奏を聞くみんなに目を向けると、みんな瞼を伏せてあたしの奏でるメロディーに耳を澄ましていた。
そんな姿を見て少し微笑みながら、演奏を続けた。
すると時々、運動場から聞こえる声が雑音となって耳に入ってくる。
だけどあたしの心は、それを受け付けないかのように跳ね返していた。
だけど無我夢中でピアノを弾くあたしでも、どうしても跳ね返すことが出来ない声があるみたいだ。