光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「…でもあたしは、たとえどんな理由があったとしても応援して欲しかった。
“頑張れ”って、背中を押して欲しかったんです」
「佐奈ちゃん…」
先生の足取りが急に遅くなったのは、あたしが知らず知らずのうちに涙を流していたからだ。
お母さんに反対されても諦めないと決めていたときは、辛くても大丈夫だと思っていた。
だけど誰も応援してくれない事実を受け入れるたびに、どうしても辛くなって悲しくなる。
涙だって、決意を無視して自然と流れてしまうんだ。
あたしが擦るように涙を拭っていると、鈴木先生は優しい口調で言った。
「佐奈ちゃんはきっと、先生が思っている以上に辛い思いをしているのよね」
「………」
「…ううん。 きっと、我慢してきたこともたくさんあるはず」
ゆっくりになってきていた先生の足取りがふと止まった。
釣られてあたしの足も、同じ場所で動きを止める。
「今までの佐奈ちゃんの苦労も、これからの苦労も、先生にはきっと理解出来ないと思う。
だけど、絶対に夢だけは諦めないで欲しい」
先生が隣にいるあたしを見て、あたしもうっすらと涙が浮かんだままの瞳で見つめ返す。