光を背負う、僕ら。―第1楽章―
本当に、大きな扉だな…。
最初はただそんなことを思いながら、目の前にそびえ立つ扉を見ていた。
けれど、自分とその先の道を隔てる大きな扉を見ていると、それがただの豪華な扉に見えてこないから不思議だ。
あたしの行く手を塞ぐものは全て、あたしが乗り越えなければいけない試練のように思えてくる。
「…」
「佐奈ちゃん、そろそろ入る? 」
「えっ?」
「学園長も、中で待っていると思うから」
「あっ…はい。 …そうですよね」
先生には平気な振りして笑みを浮かべてみたけれど、心臓はお祭り騒ぎみたいに跳び跳ねていた。
だっ、大丈夫だよあたし。
さっきは学園長とも普通に会話することが出来てたんだから。
たとえ場所が学園長室に変わったとしても、何も変わらない。
…そう。
何も…変わらない……はずだけど。
頭で考えていることとは裏腹に、体は正直に緊張によって支配されていた。
手はプルプルと震えて、動悸が徐々に激しさを増していく。