光を背負う、僕ら。―第1楽章―
強張っていた表情が、ふっと気が抜けたように柔らかくなる。
「先生、ありがとうございます。 あたし、もう大丈夫です」
「そう…」
先生は前向きになったあたしの意志を察すると、ゆっくりと握っていた手を離した。
ここまであたしのことを気にかけてくれる先生を見ていると、ふと思うことがあった。
「何だか先生って、お母さんみたいですね」
「えっ? 私ってそんなイメージなの?」
「はい。 細かいところもよく見ていて世話を焼いてくれるところが、特にそんな感じがします」
「私、昔から世話焼きって言われるの。 だからきっと、佐奈ちゃんもそう感じたのね。
…それにしても佐奈ちゃん。 どうせならお母さんじゃなくてお姉さんって言って欲しいわ。
これでもまだ、20代なんだからね」
「わわっ…! すみません!」
悪戯っぽく笑う先生に、パニックになるあたし。
二人の目が合うと、その場は穏やかな笑い声で包まれていた。