光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「ふふっ、その様子だと本当に大丈夫みたいね」
鈴木先生の声はまだ笑いが籠っているのに、視線はいつしか真剣なものに変わっていた。
分かってる。
あたしだってもう、そろそろだと思っていた。
あたしはいつまでも、壁の前で立ち止まってなんかいられない――。
「…先生、あたし、そろそろ行きますね」
旅の始まりを告げる言葉は、誰のものでもない自分の言葉でありたいから。
先生が口を開くよりも先に自分が口を開いた。
そして後から先生が口を開く。
「えぇ、行ってらっしゃい」
まるで、あたしの背中をそっと押してくれるかのように。
「あの…先生。 あたしが部屋に入る前に帰ってもらってもいいですか?」
「えっ、どうして? せっかくだから、佐奈ちゃんが入るまで待ってるわ」
「いいえ、結構です先生。
見られてるのも気まずいっていうか、恥ずかしいですし…。
それに……」
「それに…?」
聞き返してくる先生に、あたしは少し戸惑ってから返事をする。