光を背負う、僕ら。―第1楽章―



「えっ!? さっきの曲って、佐奈ちゃんが作曲したの?」


「う…うん、そうだよ」



あたしを見入るようにしながら問い掛けてくる彩愛ちゃんに、目をキョトンとさせながら答えた。



「えー!?」



と、みんなは思い思いに驚きの声を出す。



だけどそんな中、明日美と流歌だけは極めて静かで落ち着いていた。



二人だけは、演奏した曲があたしが作曲した曲だと知っている。



二人がそれを知ったのは、初めてみんなの前であたしがピアノを演奏した時だった―――。





――おととい。




部活が終わった放課後。



みんなより早く部活の片付けを済ましていたあたしは、ふと音楽室のピアノに目を向けた。



古くさい音楽室には似合わない、大きくて綺麗なグランドピアノ。



なんでも、あたしが入学する年に買い換えたらしい。



そのため、まだ新品の面影を少しだけ残している。



しばらくピアノと見つめ合ってから、キョロキョロと辺りを見渡して先生の姿がないことを確認する。



…ちょっとぐらい、いいよね。



ほんの少しの好奇心が、いつしかあたしを動かしていた。




辺りに目を配りながらピアノに近付いた。



部員のみんなは、隣りの音楽準備室に片付けに行っている。



触るなら、今がチャンスだ。



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