光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「みんな…ありがとう!」
きっとみんなの支えが、あたしの力になっている。
あたしはそのことを忘れない。
忘れるなんてしちゃいけない。
失うことなど、傷付けることなどしないようにしたいと何度も強く願った。
「ねぇ、そろそろ帰ろ。 日も暮れてきたし」
「うん、そうだね」
誰かの呼び掛けをきっかけに、止まっていた足が一斉に動き出す。
吹奏楽部のメンバーが固まって歩き出すのに続いて、あたしも明日美と流歌と並んで歩き出した。
大人数の影が重なりあって、大きな黒い闇を道に作り出している。
それを見ながら歩いていたあたしだけど、ふと何かに引かれたように振り返った。
先ほどまではとても身近に感じられた東條学園が、今では実際よりも遥か遠くにあるように感じられる。
でも巨大な建物は遠くにあってもその存在感を失うことはなかった。