光を背負う、僕ら。―第1楽章―



ささっとピアノに近付き、鍵盤の蓋を開いた。



「……ふぅー…」



深く重いため息が、あたしだけがいる音楽室に静かに響き渡っていった。



一体、何に対してこんなため息をついているんだろう…。



ピアノに触れることに緊張してるの?


誰かが来るんじゃないかという、恐怖感?


自分でも……よく分からない。



だけど、今のあたしを動かしているのは……


ピアノに触れたい……その一心。



ゆっくりと、恐る恐るといった感じで鍵盤を押した。




♪ーー……




鍵盤を押すと、出た音が音楽室に響き渡る。



――もう、止められなかった。



椅子に座り、鍵盤の上で指を動かし始める。




♪~♪~♪♪~♪~♪




あたしは思うままに指を動かし、演奏を続けていく。



自分の頭の中に浮かぶメロディーを奏でていたんだ。




……♪♪~♪~♪♪♪~♪♪~♪――




しばらく弾いた後、ゆっくりと指の動きを緩めて演奏を終えた。



…と、その時。




パチパチパチパチ…




突然、背後から拍手が聞こえてきた。



突然の拍手と、人がいたことに驚いたあたしの心臓は、ドキッと勢いよく跳ねた。



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