光を背負う、僕ら。―第1楽章―



恐る恐る、拍手が聞こえてきた方に振り向く。



「すごいね佐奈! さっきの演奏!」



振り向くと、そこにいた明日美がそう言った。



その周りには流歌や彩愛ちゃんといった、三年生の部員達の姿もある。



その瞬間、体中の血が一気に引いていくのを感じた。



そして一気に血の気が引き終わると、今度は恥ずかしさで一気に顔が赤くなる。



「あっ…、えっと! これは…!」



自分が何を言いたいのか、何を言うべきなのかが分からずにただ慌てふためいた。



だけどあたしの心情とは裏腹に、流歌が満面の笑顔で口を開く。



「佐奈、ピアノ弾けたんだね!!」


「なんで今まで教えてくれなかったの? さっきの演奏、すごく良かったのに」


「……えっ?」



てっきり違うことを言われると思っていたから、明日美と流歌の言葉に拍子抜けした。



「あたしの演奏が、良かった…?」


「「うん!」」



二人とも、屈託のない笑顔でそう答えてくれた。



彩愛ちゃん達も、すごく笑顔だ。




――そう。


この時が、初めてみんなの前でピアノを演奏したとき。



そして、あたしの演奏でみんなが笑顔になったことに初めて喜びを感じたとき。



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