光を背負う、僕ら。―第1楽章―
――そして、その日の帰り道。
「ねぇ、佐奈?」
アスファルトの道が夕日でオレンジ色に染まる中、流歌が少し遠慮がちに尋ねてきた。
そんな流歌の顔や髪の毛も、オレンジ色に染まって見える。
「どうして、ピアノが弾けること黙ってたの? 別に隠す必要ないんじゃない? あんなに上手いんだから」
「…それは…」
あたしはアスファルトの道路を見つめながら言葉を詰まらせる。
そんなあたしの姿を、流歌と明日美は不思議そうに見ていた。
「その…。 隠してたわけじゃないんだけど、ただ……」
「言わなくて大丈夫だよ」
あたしの心を読んだように、その心を優しく包み込んでくれるような明日美の声。
あたしは顔を上げた。
顔を上げると、さっきの明日美の声のような穏やか瞳であたしを見る明日美と流歌の姿が視界に入る。
「言わなかったのは、何か理由があるんでしょう?」
「う…うん」
「だったら、無理に言う必要ないよ?」
「そうそう! 佐奈が言おうと思った時に、言ってくれればいいんだから。 ……ね?」
二人の言葉は、あたしの心をとても心地良くて温かいもので包み込んだ。