光を背負う、僕ら。―第1楽章―
手の届かない人
――――……
「……奈。 佐奈ちゃん!」
「…あっ、ごめん。 ……何だっけ?」
おとといのことを思い出していたあたしは、彩愛ちゃんの声で我に返った。
「ねぇねぇ、作曲ってどうやってしてるの?」
彩愛ちゃんは興味津々な様子であたしに問い質す。
そういえばみんなにも、さっき演奏した曲はあたしが作曲した曲だって説明したんだっけ。
実際言ったのはあたしではなくて、流歌だけど。
「どうやってって言われても…。 ただ、思い付くままに弾いてるだけだよ?」
「そうなの? やっぱり佐奈ちゃんすごいね!」
キィー………
彩愛ちゃんがそう言った時、音楽室のドアが開いた音が聞こえてきた。
その音に反応したあたしやみんなは、一斉にドアの方に目を向ける。
するとそこには、数人の女子生徒がいた。
その子達はみんな、あたしと同じく三年生であり、同じ吹奏楽部の部員だ。
みんな肩にスクールバックをかけているところを見ると、帰る準備が出来ている状態だ。
そこで、ふと疑問が浮かんできた。
あれ…?
あの子達って確か、あたしがピアノの演奏を始める前に帰ったんじゃなかったっけ。
戻ってきたってことは、忘れ物でもしたのかな?