光を背負う、僕ら。―第1楽章―



すると小春ちゃんは、にこっと微笑んだ。



その笑顔がまた可愛らしい。



そう思っていると、小春ちゃんが思い出したように口を開いた。



「さっき聞こえてきたピアノの演奏って、佐奈ちゃんが弾いてたの?」



小春ちゃんの言葉に、思わず目を丸くした。



そういえば小春ちゃん、


『ピアノの演奏が聞こえてきたから、戻ってきたの』


って言っていたっけ。



そのことを思い出したあたしの背中に、つーっと冷や汗が流れた。



まさか、よりによって小春ちゃんに、さっきの演奏が聞かれていたなんて…。



内心複雑な気持ちでどぎまぎしながら答える。



「…うん、そうだよ」



「そうなんだ! 佐奈ちゃんってピアノ上手いね!」


「…そんなことないよ」


「あたしね、佐奈ちゃんの演奏って心が表れるような感じがするから好きになっちゃった」


「…そう…かな? …ありがとう」



小春ちゃんに褒められるなんて、お世辞かもしれない。



だけど素直に喜んでおいた。



それにしても小春ちゃん。



『心が表れる』なんて、あたしが幼い頃に聞いたあの言葉にそっくりだ。




《音楽は、心の表れ》




あの言葉、実は有名だったりするのかな?



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